【会員活動紹介】350.org Japan

 

· 会員,政策提言,活動報告,ドイツC7

G7市民社会コアリション2023には、日本の市民社会組織78団体および21名の個人が会員として参加しています(2022年7月8日現在)。

G7サミットに向けて会員の活動を随時ご紹介します。

broken image

脱炭素社会を構築するために世界の約180カ国において若者や市民の草の根の運動を展開する国際環境NGO 350.org Japan (スリーフィフティードットオルグジャパン)は、G7首脳会合の結果を受けて、以下の声明を発表しました。

声明

2022年6月29日

国際環境NGO 350.org Japan

G7エルマウサミット閉幕:岸田首相、気候危機に立ち向かう意思を示す機会を逃す

6月28日、ドイツで開催されたG7サミットにおいて各国首脳は、地球温暖化の1.5℃目標を達成可能にすること、ロシアのエネルギーへの依存からの脱却のために気候変動の目標を妥協しないとの言明を含むコミュニケを採択し、閉幕しました。また、COP26グラスゴー気候合意に沿って、2030年までの温室効果ガス排出削減目標について、パリ協定の気温上昇抑制目標に整合するよう、2022年末までに見直し、強化するよう求めています。

5月の環境・気候・エネルギー大臣会合に続き、本日の首脳宣言では、石炭火力発電が温暖化の最大の要因であるとし、国内の石炭火力発電のフェーズアウトを加速させるために具体的でタイムリーに対応することを優先課題にあげるとともに、2035年までの電力部門の脱炭素化を盛り込んでいます。このプロセスにおいては日本がG7で唯一、脱石炭火力の目標年を盛り込むことに強く反対していたとされています。科学者によれば、パリ協定の目標のためには、日本を含むOECD諸国が、遅くとも2030年までに石炭火力発電から脱却しなければなりません。また、首脳会合に際しても、排出ゼロ車の普及に関する目標を削るよう日本政府が要求したと報じられています。日本政府がG7の合意を弱化させ、岸田首相が指導力を発揮するどころか、合意の前進に水を差したことは極めて残念です。

5月の環境・気候・エネルギー大臣会合においては化石燃料全般について新たな公的国際支援を2022年末までに止めるとの方針が盛り込まれていました。しかし、今回の首脳宣言において、例外を書き加え、LNG調達の役割を強調し、ガス部門への投資に対する公的支援を現在の危機における一時的な対応として容認する内容となったことは問題です。気候変動の科学は、1.5℃未満のためには石炭のみならず石油・ガスからの脱却が不可欠であることを示しています。この合意がガスの延命の正当化に使われるようなことがあってはなりません。

岸田首相は、日本の2030年までの温室効果ガス排出削減目標がパリ協定1.5℃目標に整合しないとの科学者の指摘を受け止め、遅くとも今年中に目標を引き上げる必要があります。また、炭素回収利用貯留(CCUS)やアンモニア・水素混焼といった不確かで2030年に実用化と普及が間に合う見通しのない革新的技術によって化石燃料依存を正当化することをやめ、2030年脱石炭のロードマップづくりにただちに着手する必要があります。このような対応に首相としての指導力を発揮してこそ、来年のG7広島サミットの議長国としての準備が整うはずです。

国際環境NGO 350.org Japan代表の横山隆美は次のようにコメントしています。

「ウクライナ戦争で世界規模でエネルギー危機が叫ばれる中にもかかわらず、本宣言で脱炭素社会への移行への意志が揺るぎのないことが確認されました。我が国も目の前の課題の解決ばかり議論するのではなく、パリ協定の1.5℃目標と整合した国別削減目標への改定を含め、持続的地球環境の維持のため国際社会を積極的にリードする国になることを望みます。」

国際環境NGO 350.org Japanのコミュニケーション・コーディネーターの伊与田昌慶は次のようにコメントしています。

「記録的な熱波が日本列島を襲う中、岸田首相は世界的な気候危機に立ち向かうG7の連帯を示すことに失敗しました。パリ協定の1.5℃目標のためには2030年までに石炭火力発電ゼロが必要との科学的知見や市民社会からの要請があるにもかかわらず、日本政府は『石炭中毒』から脱却する意思を示さず、G7サミットの合意を弱化させました。

日本政府は、COP27シャルム・エル・シェイク会議までに、気候危機対策を強化する必要があります。2030年までの温室効果ガス排出削減目標は2013年比で62%削減へと引き上げる必要がありますし、脱石炭の明確なロードマップを描く必要があります。気候対策の強化は、原子力やCCUS、アンモニア・水素混焼といった、2030年までに実用化・普及の見込みのない革新的技術に賭けるのではなく、省エネの徹底と再エネ100%への公正な移行を推し進めることによって実現すべきです。さもなくば、日本は、来年のG7サミット開催国としての信頼をさらに失うことになるでしょう。」

本件に関する問い合わせ

国際環境NGO 350.org Japan 伊与田昌慶

japan@350.org