G7市民社会コアリション2023会員の国際環境NGO 350.org Japanは、G7札幌環境・エネルギー・気候大臣会合のコミュニケ発表をうけて、2023年4月16日、下記の速報的声明を発表しました。
声明
2023年4月16日
国際環境NGO 350.org Japan
G7札幌環境・エネルギー・気候大臣会合を受けて:
石炭を含む化石燃料の全廃に向けた明確なロードマップを示すべき
4月16日、G7札幌環境・エネルギー・気候大臣会合は、コミュニケを採択し、公表しました。コミュニケでは、ロシアによるウクライナ侵攻による環境破壊等に言及した上で、パリ協定1.5℃目標のために「この決定的に重要な10年間」に対策の規模を拡大する意思を強調するとともに、再生可能エネルギー導入数値目標が合意されました。
しかし、「2035年までの電力部門の完全あるいは大部分の脱炭素化」については昨年の合意を踏襲し、前進はみられませんでした。また、国内の石炭火力発電の全廃の期限を盛り込むよう日本以外のG7各国は求めていましたが、結果的には盛り込まれませんでした。これは、議長国である日本の強い反対があったためであると報じられています。
「この決定的に重要な10年」にCO2の大幅削減に貢献する見込みのないアンモニア・水素の化石燃料混焼の発電部門での活用について、G7各国から懸念が示されていたにもかかわらず、日本政府が合意に盛り込んだものとみられています。これは、350 Japanをはじめ、国内外の市民社会が、化石燃料の利用継続を正当化する延命策であり、グリーンウォッシュであるとして強く批判を行ったきたものです。化石ガスの利用や原子力を正当化するような内容も盛り込まれていることも大きな懸念です。
石炭を含むすべての化石燃料を全廃する明確なロードマップがなければ、気候災害はますます激化し、止まらぬ化石燃料開発によって、途上国や弱い立場に立たされた人々が傷つくことになります。価格が乱高下する化石燃料や危険な原子力に依存し続けることは私たちの生活が脅かされること、ロシアからの化石燃料を購入し続けることはウクライナの平和を阻害することを意味します。
岸田文雄首相を含むG7首脳は、5月のG7広島サミットにおいて、この札幌大臣会合の合意を超えて、グリーンウォッシュの革新的技術に頼らない、明確な化石燃料全廃へのロードマップと、持続可能な再生可能エネルギー100%への公正な移行を打ち出す必要があります。
国際環境NGO 350.org Japanチームリーダー代理の伊与田昌慶は、次のようにコメントしています。
「G7札幌大臣会合において太陽光と風力の再エネ導入数値目標が合意され、パリ協定1.5℃目標実現への手段として位置づけられたことは前進です。しかし、気候危機の緊急性に十分に対応したものとはいえません。グリーンウォッシュであるアンモニア・水素の化石燃料への混焼発電、実現性が不確かなCCS、CCUS、DACCSといった革新的技術や原子力発電を列挙して、足元で集中的に進めるべき省エネルギーや、再生可能エネルギー100%への公正な移行の必要性を見えにくくしています。とりわけ、国内石炭火力発電のフェーズアウトの期限を示すことに日本政府が抵抗したのは、日本抜きでの『G6』なら、もっと良い合意ができたはずだということを象徴しています。国際的な化石燃料事業への公的資金支援をただちに全面的にとりやめることも重要です。
5月のG7広島サミットに向けて、岸田文雄首相は、最新のIPCC報告の科学に向き合い、石炭を含む全ての化石燃料からの脱却のロードマップを示さなければなりません。」
問い合わせ先:
国際環境NGO 350.org Japan チームリーダー代行
伊与田昌慶(いよだまさよし)
Email: japan@350.org
国際環境NGO 350.org Japan 広報担当(Communication Consultant)
髙橋英江(たかはしはなえ)
Email: japan@350.org